『死の壷』 [読み物・作品]

■くじ引きで選ばれた10のキーワードを(必ず)使って、ストーリーを作る。
 誕生、あの人、光、嘘、カーブ、
 黒電話、ビー玉、鎖骨、爪先、バナナ。
■場所の条件は「囚われた場所」
 物理的にでも、精神的にでも。
 ずっとでも、最初からでも、途中からでも。

以上の条件で、15〜30分の芝居を作る。
という状況で。
二つ企画を出して、残念ながら【落選】したのがこれです。

  2012.08 作:岡野陽平
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『死の壷』

【あらすじ】
牢獄に品の良い婦人と少年が連れて来られる。
婦人「こんな暗い所に」
看守「別荘でも与えてもらえると思ったかい? そら、早く入れ」
牢獄の入口は、ひと一人がはいつくばって通るような『穴』だ。

ここは『死の壷』。忘れられた牢獄。
暗く、狭く、汚い。光はわずかしか差さない。

牢獄には先客の『囚人』が居た。汚く汚れ、もうずいぶんと長く入っているらしい。
囚人「新入りかい?・・・おっとコレは王妃様じゃございませんか」
二人は王妃とその息子(王子)なのだ。
死刑は免れたが、終身刑でもない。『死の壷』に押し込められて、ただ忘れられていくだけ。

二人はなぜ捕らえられたのか。
国王の弟『公爵』がクーデターを起こし、国王は殺された。
二人は親族という慈悲で死刑は逃れたが、『死の壷』に送られ、
王国中には死んだという嘘が流されている。
王子「母様、どうしましょう」
王妃「ここまで来てしまったら、もうどうもできない。ここで死を待つだけ」
王子「あとは姉様が頼り」
二人にとって最後の希望は、二人とは別に逃げている王女(姫)だ。


ここでは食事の時だけが唯一外界とつながる一瞬。
と言っても、看守が食事を入れるだけ。

看守は囚人の鎖骨を集めるのが趣味で、鎖骨を並べて楽器にしている。悪趣味なヤツだ。
備え付けの黒電話でときどき外と会話している(囚人たちは盗み聞きする)が、
食事を運ぶ時くらいしか来ない。
(食事は汚いからと足で入れるだけ。入口の『穴』から、お盆をつま先で押し入れる)

ある日、姫の「付き人」が『死の壷』に連れてこられた。つまり姫も捕まったのだ。
二人の希望は絶たれる。

先客の『囚人』はビー玉で遊んでいる。
外の様子を質問してくるが、偉そうで、態度はきわめて悪い。やる気もない。
しかし、彼は実は10年前にクーデターを起こして失敗した『国王の伯父』だった。

10年前、国王の父(先王)が亡くなったときに起こった兄弟の跡継ぎ争い。
結局兄が継いで国王となり、弟は『公爵』に甘んじた。
そのときの国の混乱に、『国王の伯父』もチャンスと動いたが、捕まったのだ。

その10年前の跡継ぎ争いが尾を引いての、今回の『公爵』のクーデター。
国王は殺された。
囚人「嘘っぱちでも、『正義』の旗の下に国を作らなくちゃ、国の寿命は長くないぜ」
王子「お前が言うな!」

看守が食事を運んでくる。
看守「今日は新たな国王の就任式と、同時にその新国王と姫(姉)とが結婚する。
王宮では盛大な祝賀会だ。お前らにも後でデザートがあるぜ」
姫は無理やり結婚させられるのだ。新国王の正統性のために。
王子「なんてことだ!」

囚人「今、国は揺れている。チャンスだ」
王子「チャンスなもんか!ここから出ることも出来ないくせに!」
囚人「いいや、その気になればいつでも出れる。問題は『いつ出るか』だった」

看守がデザート(もちろんバナナ)を持ってくる。
いつものように足で押し入れる。
その瞬間だ! 『囚人』は看守の足を掴んで、一瞬で足首の骨を折る。
次の瞬間には入口の穴を抜け出して、看守にとどめを刺す。

すぐに『囚人』は黒電話でどこかへ電話をする。昔の仲間・家臣に集合をかけたのだ。
囚人「あんたらも、早く出るんだ」
祝賀会の隙を突き、国の混乱に乗じ、暴れるのだ。
新国王誕生で終わるはずだった跡継ぎ争い。しかし、そう上手くはいかない。
まだまだ何か起こりそうだ・・・。 予感と共に幕が下りる。


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