『自分日記帳』 作:岡野陽平 [読み物・作品]
2011年3月、よんすて内部発表会にて発表。
一人芝居。
「 」の中は声を出し、( )は声に出さないで表現。
※ケース・バイ・ケースで。 全部読んでもよい。
~~~~~~~~~~~~~~~
■神社。
「明日のセンター試験、上手くいきますように!」
(目標78%。東アジア大学に一発合格できますように!)
「ふ~。」
(気分転換に神社まで合格祈願に来てみたけど、来て良かった。
なんかホッとした。さ、帰ってまた勉強しよ)
「帰ろうとした矢先に、声をかけられました。
『落としましたよ』と言って渡された手帳に、見覚えはなかったのですが、
なぜか自分の物だという確かな感覚を覚え、
受け取ってしまいました」
「あ。ありがとうございます」
■首をかしげる。
(これ、なんだっけ)
■1,2ページ目を開く。
「生まれ、1993年」
(2月10日 午前3時45分。
兵庫県立西宮病院 産婦人科にて 生まれる)
「ナニコレ?」
(俺と同じ誕生日じゃん。母子手帳?」
「父」 (シンイチ)
「母」 (タカミ)
「え! 俺の!?」
■サッと1ページ目を見るが分からず、カバーを外して表紙を確認する。
そこには自分の名前が書いてあった。
(俺の名前。俺のだ。 俺の、母子手帳?)
■数ページ確認する。
(違う)
「なんだこれ!」
■この手帳には自分の人生のことが事細かに書いてあった。
「6歳。幼稚園の年長。にじ組。
初恋のサナエ先生が担任。
子供の無邪気さを武器に、サナエ先生の胸に飛び込むケンタロウ君に嫉妬する」
「おいおーい! 何だこれ!?」
「小学校4年、同じクラスのユミちゃんのことが好きで、
放課後こっそりユミちゃんの席に座ったり、
たて笛を吹いたりすると言っていたケンタロウ君に嫉妬する」
「えぇぇ! ・・・やめてよケンタロウ君・・・」
「ていうか、何でこれ、俺の秘密が全部書いてあるんだ!?」
(誰が書いたんだコレ!?)
(・・・イヤ、これ、俺の人生が書いてあるんだ・・・なんで、こんなモノが)
■後半のページを開いて。
「2036年・・・!!!」
■恐れてバッと閉じる。
「やばい。これ、全部書いてある」 (全部、未来のことも全部)
■見たいような、見てはいけないような。恐怖。
(これは一つの誘惑ですね)
「あ、明日のことだけ」 (見よう。) 「明日の」
「2011年1月・・・センター試験」 (は・・・5教科700点満点で574点。82%!)
「すごいいいじゃーん!」
「あ。世界史が」 (65点は) 「悪いな。」 (特に悪い)
「帰って勉強しよ!」
■急いで帰ろうとするが・・・
(いや、もうしなくていいのか。未来は決まっているのだから)
「いや~でも」 (574点か~。) 「良いね。うん」
(頑張ったじゃん俺。これなら国立の本試験も大丈夫そうだな)
■ページを進める。
「あ・・・」
■動揺。不安。慌てて先のページを見る。
「よし!」
(よかった~。滑り止めのジャパン大学、受かってる。)
「よかった~」
「びっくりさせるなよ。
ちょっとセンター試験良かったからって、第一志望上げるなよな~」
(もう、調子乗りすぎなんだよ~。まったく~)
「え、星田佳代子と付き合うの?
ホシカヨと? マジで!?
あ、同じ大学に行くんだ~。
え~、俺、ホシカヨと一回もしゃべったことないよ」
「明日試験会場で会うよな。困ったな、え~、どうしよ」
「・・・とりあえずホッカイロ持ってってやろ。」
「『良かったら、使って』。 違うな。『寒いだろ。ほらよ』
ちょっと冷たいかな。
クールなのは良くないよな。寒いんだから。ホットにいかなくちゃ。
・・・明日がんばろうな、佳代子。」
「就職・・・よ~し!」
「お~、ホシカヨと結婚かー! 佳代子―!」
「さらに続きを読みました。
45歳のときに発明した『痛くない鼻毛抜き器』で一財産を築き、
その後も人生山あり谷あり、
88歳の米寿のお祝いで12人の孫に囲まれ、
翌年の正月、喉に餅を詰まらせて死んだときは感無量でした。
最後まで読みきって、満足して眠りにつきました」
「そして、センター試験当日!」
■寝ている。起きて時計を見る。
「やっべ、え、」 (もう昼じゃん! センター試験、とっくに始まってる!)
「え、何で?」 (574点は?)
「え、浪人? 佳代子とも結婚してないし」
「10年後、アメリカで寿司職人になってる・・・」
一人芝居。
「 」の中は声を出し、( )は声に出さないで表現。
※ケース・バイ・ケースで。 全部読んでもよい。
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■神社。
「明日のセンター試験、上手くいきますように!」
(目標78%。東アジア大学に一発合格できますように!)
「ふ~。」
(気分転換に神社まで合格祈願に来てみたけど、来て良かった。
なんかホッとした。さ、帰ってまた勉強しよ)
「帰ろうとした矢先に、声をかけられました。
『落としましたよ』と言って渡された手帳に、見覚えはなかったのですが、
なぜか自分の物だという確かな感覚を覚え、
受け取ってしまいました」
「あ。ありがとうございます」
■首をかしげる。
(これ、なんだっけ)
■1,2ページ目を開く。
「生まれ、1993年」
(2月10日 午前3時45分。
兵庫県立西宮病院 産婦人科にて 生まれる)
「ナニコレ?」
(俺と同じ誕生日じゃん。母子手帳?」
「父」 (シンイチ)
「母」 (タカミ)
「え! 俺の!?」
■サッと1ページ目を見るが分からず、カバーを外して表紙を確認する。
そこには自分の名前が書いてあった。
(俺の名前。俺のだ。 俺の、母子手帳?)
■数ページ確認する。
(違う)
「なんだこれ!」
■この手帳には自分の人生のことが事細かに書いてあった。
「6歳。幼稚園の年長。にじ組。
初恋のサナエ先生が担任。
子供の無邪気さを武器に、サナエ先生の胸に飛び込むケンタロウ君に嫉妬する」
「おいおーい! 何だこれ!?」
「小学校4年、同じクラスのユミちゃんのことが好きで、
放課後こっそりユミちゃんの席に座ったり、
たて笛を吹いたりすると言っていたケンタロウ君に嫉妬する」
「えぇぇ! ・・・やめてよケンタロウ君・・・」
「ていうか、何でこれ、俺の秘密が全部書いてあるんだ!?」
(誰が書いたんだコレ!?)
(・・・イヤ、これ、俺の人生が書いてあるんだ・・・なんで、こんなモノが)
■後半のページを開いて。
「2036年・・・!!!」
■恐れてバッと閉じる。
「やばい。これ、全部書いてある」 (全部、未来のことも全部)
■見たいような、見てはいけないような。恐怖。
(これは一つの誘惑ですね)
「あ、明日のことだけ」 (見よう。) 「明日の」
「2011年1月・・・センター試験」 (は・・・5教科700点満点で574点。82%!)
「すごいいいじゃーん!」
「あ。世界史が」 (65点は) 「悪いな。」 (特に悪い)
「帰って勉強しよ!」
■急いで帰ろうとするが・・・
(いや、もうしなくていいのか。未来は決まっているのだから)
「いや~でも」 (574点か~。) 「良いね。うん」
(頑張ったじゃん俺。これなら国立の本試験も大丈夫そうだな)
■ページを進める。
「あ・・・」
■動揺。不安。慌てて先のページを見る。
「よし!」
(よかった~。滑り止めのジャパン大学、受かってる。)
「よかった~」
「びっくりさせるなよ。
ちょっとセンター試験良かったからって、第一志望上げるなよな~」
(もう、調子乗りすぎなんだよ~。まったく~)
「え、星田佳代子と付き合うの?
ホシカヨと? マジで!?
あ、同じ大学に行くんだ~。
え~、俺、ホシカヨと一回もしゃべったことないよ」
「明日試験会場で会うよな。困ったな、え~、どうしよ」
「・・・とりあえずホッカイロ持ってってやろ。」
「『良かったら、使って』。 違うな。『寒いだろ。ほらよ』
ちょっと冷たいかな。
クールなのは良くないよな。寒いんだから。ホットにいかなくちゃ。
・・・明日がんばろうな、佳代子。」
「就職・・・よ~し!」
「お~、ホシカヨと結婚かー! 佳代子―!」
「さらに続きを読みました。
45歳のときに発明した『痛くない鼻毛抜き器』で一財産を築き、
その後も人生山あり谷あり、
88歳の米寿のお祝いで12人の孫に囲まれ、
翌年の正月、喉に餅を詰まらせて死んだときは感無量でした。
最後まで読みきって、満足して眠りにつきました」
「そして、センター試験当日!」
■寝ている。起きて時計を見る。
「やっべ、え、」 (もう昼じゃん! センター試験、とっくに始まってる!)
「え、何で?」 (574点は?)
「え、浪人? 佳代子とも結婚してないし」
「10年後、アメリカで寿司職人になってる・・・」
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