『空港はいつもドラマ』 [読み物・作品]

■映像表現として(シナリオ)
■200文字x7枚
■テーマ「再会」
という課題で。

ちょっとした短編として。
タイトルにひねりがない...
     2012.06.14 作:岡野陽平

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『空港はいつもドラマ』

人物
 長沼健一(39) 母と二人暮らしの男性。
 長沼治子(64) その母。
 佐伯正敏(54) 国際空港の職員。


◯空港内の一室。
  静かで簡素な応接室。
  佐伯正敏(54)は窓際に立ち、長沼健一(39)はソファに。
  窓の外に、旅客機が一機着陸する。
  佐伯がにこやかにふり返って、
佐伯「無事着いたようですよ」
長沼「そうですか」
佐伯「入国手続き等して、もうすぐお会いできますので」
長沼「はい」
  佐伯もソファに座る。長沼の向かい。
佐伯「それでは、確認の続きですが。えー、長沼健一さん、あなたですが、は、先月6月14日に長沼治子さん、あなたのお母さんですね、を連れて、メキシコに、旅行に、行ったわけですねぇ」
  長沼は無反応。佐伯は続けて、
佐伯「メキシコシティに着いたあなたはお母さんを、空港から遠ーい、小さな田舎町に連れていって、で、えー、お母さんをそこに置いたまま、あなた一人帰ってきた、と」
長沼「そうです」
佐伯「で、その置き去りにされちゃったお母さんの方ですけど…。
お金もなし、パスポートもなし、言葉も全く通じない。なんせスペイン語ですから。現地の警察や日本人旅行者を頼って、どうにかこうにか日本大使館に保護されるまでに3週間かかったようです。
で、今日ようやく帰国できた、と」
長沼「うちの母がご迷惑をおかけします」
佐伯「あはは! お母さんがね!」
  長沼も苦笑とも取れる愛想笑いをする。
佐伯「私達も別に警察じゃないですし、親子の問題ですからね。深くは聞きませんけど…なんで、こんなことしたんですか?」
長沼「なんていうか、私、ずっと、『母をたずねて三千里』に憧れてまして…」
佐伯「それ逆ですよね。今回さまよったのは『母』の方なんですけど」
  沈黙。長沼がこめかみを軽く掻いて、
長沼「えーと、そうですね、あの、姥捨て山ってあるじゃないですか? それでね…」
佐伯「あ、もう分かったので続きはいいです」
長沼「分かっちゃいましたか?」
佐伯「だって、そういうことでしょ?」
長沼「…はい」
佐伯「姥捨て山ってのは、メキシコにも失礼なんじゃない?
…。で、それは本当ですか?」
長沼「嘘です」
佐伯「嘘はつかないで下さいね」
長沼「努力します」
佐伯「ぜひ!」
長沼「いや、なんていうか、千尋の谷に我が子を突き落とすライオンのように…」
佐伯「それも逆ですよね? 親子」
長沼「…はい」
佐伯「まぁ、確かにお母さん、随分たくましくなられたようですよ」
  入口に長沼治子(64)が現れる。ブーツ、ハット、日焼け等、すっかりメキシコ人。
  二人が驚きと笑顔で治子を迎える。
長沼「母さん!」
  治子はつかつかっと長沼に歩み寄り、
治子「健一!」
  治子が長沼の顔面にグーでパンチ!
  ぶっ倒れる長沼。驚く佐伯に治子が、
治子「あぁ、どうもすいません。この度はうちのバカ息子がとんだご迷惑を」
佐伯「お母さん、随分たくましくなられたようで!」



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